気づきと学びと実践

私たちは加害更生プログラムのグループに参加すると、

最初にそれまでは自覚していなかった暴力や支配的な言動に次々と気づくことになります。

客観的に見て暴力とされる言動の殆どについて、自分にも思い当たる節があるという感じです。

 

私自身の"思い当たる節"で言うと

パートナーに自分の意見を何度言っても聞き入れられないので大声を出してしまったとか、

自分が壁を叩くのは怒っているのではなく言葉が出てこないだけだというものがありました。

私はこれらの行為についてグループで学ぶまでは、

自分は相手を攻撃する意図など全くなく意見を言ったり意思表示をしているだけなのだから

暴力ではないという認識でした。

 

しかしどうでしょう。

客観的に見れば大声で怒鳴る私、壁を叩く私は怒りに任せて相手を恫喝している怖い人に

他ならなかったのです。

私は恥ずかしながらこれら自分の暴力をグループに参加するまで自覚できていませんでした。

ですから当然のように自分は間違ってない、悪くないと思っていて、

自らの言動を改めることもありませんでした。

 

グループでは自分の行為を振り返り問題点について仲間からアドバイスを受けたり、

教材や課題に取り組み自分の歪んだ思考と価値観に気づき、

暴力を手放すための学びを深めて行きます。

そのためには自分自身が変わるという意志は不可欠だと思っています。

 

学びの一例として、

自分の行動パターンを変えるために視野を拡げて物事を多角的に見れるようにする

ことなどがあります。

私たちはひとりひとりがその人のみのフィルターを通して外の世界を見ているので、

主観的で視野は狭くなりがちです。

ここを変えて自分の行動の選択肢を増やすために視野を広げ、

物事を客観的に見る方法について学ぶのです。

ずっと無意識に繰り返してきた認知と行動を変えるには、

新たな知識を取り入れ自分のパターン化した行動に気づこうとする意識が必要です。

 

具体例として、自分が被害者ポジションをとるということについて。

これは誰も自分のことを責めたり非難したりしていないのに文句を言われたと思い込んで

怒ることなどです。

被害者になるということは怒りを表してもよいという加害行為の正当化になる

ということを学びました。

グループではこの責められたなどの勝手な思い込みを変えるにはどうしたらよいか、

ということについても話し合います。

相手の言動や目の前の出来事を客観的に見て冷静に行動するためにできることとして、

グループではしばしば「相手の話に耳を傾ける」というフレーズが出てきます。

 

私たちが勝手な思い込みで暴力的な言動をしてしまうとき、

相手の話を最後まで聞いていることは殆どなく、

仮に聞いていたとしても相手の言葉を受け止めることをしていないのだと思います。

相手の話を聞かないから物事を自分都合で解釈して怒る、

落ち込むなどの反応を示すことになるのだと気づきます。

このような暴力に繋がってしまう自動思考と反応を変える手段のひとつとして

「相手の話に耳を傾ける」ことはとても有効だと思います。

 

このようにしてみんなで考えて気づいたことを身に付けるためには、

繰り返し繰り返し実践することがとても大切だと思います。

暴力を手放し人との関係をより良いものにする、

そのように自分は変われると信じて私たちはプログラムに取り組んでいます。