視点が変わったこと

私はたんとすまいるの加害更生プログラムに参加してから、新聞やテレビ、ネットニュースなどでDV、児童虐待及びジェンダーに関連する記事(情報)に関心を高くしています。

もちろんその目的は、それぞれの事案を自分に当てはめてみて考えて、

歪みのある思考と価値観に気づき言動を変えていくことにあります。

 

 このような意識のもとで最近とても気になるニュースがありました。

それはテレビでも人気のタレントが妻に暴行を加え、裁判で罰金が課せられたという記事です。

私はこの報道に接し、報道のあり方と私たちが生活している社会における暴力(DV)に関する

認識及び報道が及ぼす影響について思うところがありました。

 

この事件の概要ですが、ある有名タレントが家庭内別居状態にある妻側の家屋

(1階と2階に分かれて住んでいたようです。)の電気を止め、

さらに妻の郵便物を勝手に開封したということでした。

それに対して妻は、同タレントに「次にやったら警察を呼ぶ。」と苦情を述べたそうです。

対するタレントは妻に「ボコボコにしてやる。」と発言して、

妻の左頬を右手の人差し指でつついた、ということでした。

私が見たニュース番組では、タレントの「ボコボコにしてやる。」という発言は

バラエティーで普段から発言している内容であり悪意はなかったという本人の弁とともに、

記者が裁判を傍聴した際、法廷に提出された妻との会話を録音した音声を聞いたそうです。

その記者には被告の発言はバラエティーと同様のトーンだったように聞こえたというふうな

コメントしていました。

これを見た私は、コメンテーターがこのタレントの言動からは悪意を感じられなかった

と言っているような印象を受けました。

また、妻に対する身体的暴力である頬をつついたという行為に関しても、

私はコメンテーターの口調や表情から大したこと(暴力)ではない、

というような印象を受けました。

 

私はここで特定の報道機関やコメンテーターを非難する目的で

この話題を取り上げているのではありません。

報道を見た人が暴力(DV)に関しての問題意識を共有して、

自分たちのまわりから暴力をなくしていくためにはどうしたら良いのか、

そして暴力に鈍感であることによる弊害と敏感になることで得られるメリットについて、

この報道にふれて考えるところがあったのです。

 

 私は自分がDVをしている自覚がなく何がDVなのかを学ぶ以前であれば、

この報道に関心を持つこともなくニュースを耳にしてもタレントの痴話喧嘩としか

思わなかったでしょうし、タレントの妻に対しても「大騒ぎしすぎ」「自意識過剰」

などと思って気にもとめることはなかったと思います。

 

しかし、加害更生プログラムで学び続けている私にはこの事件の根本にタレントの

妻に対する支配と束縛、力の誇示や脅迫の意志があっての言動だったのではないかと思いました。

このような暴力事件をニュースで取り上げる際には視聴者が受ける印象、

例えば"有名人の大袈裟な痴話喧嘩"や"タレントに悪気はないのに大事になってしまった"とか"

どこにでもある夫婦喧嘩なのに妻に騒がれて運が悪かった"などというような

暴力の矮小化や許容につながるような表現は避けて、ニュースを見た人たちが暴力に対する

アンテナを高く持てるような報道のあり方を私は望んでいます。

 報道機関や教育現場などで、暴力は間違った行為だとハッキリと言える社会になることで、

自分の親、兄弟、友だち、会社の同僚など、もしも周囲に無自覚のDVをしてしまっている人が

いたならば、人目をはばかることなく率直に間違った行為を指摘し合えることができる環境が

つくられていくのだと思っています。

 

そのためにも私自身ができることとして、私の周囲でこのニュースが話題にでたときには

"これはDVだし裁判所もそう判断したんだよ"と、

"そして僕もこの人と同じようなことをしてしまったんで

自分の言動を改善する努力をしているんだよ"と伝えていきたいと思っています。