魅力的な2人

朝目覚めると、子供たちが隣でぐっすりと眠っている。

妻がキッチンで朝ごはんとお弁当の準備をしてくれている音が聞こえる。

起きて仕事に行く準備が済む頃に子供たちが起きてきて、家族で朝食を取る。

出社するときは家族全員が玄関まで見送りに来てくれて、全員を抱きしめてから、妻の作ってくれたお弁当を持って会社に行く。

仕事が終わると家路を急ぎ、玄関を開けると、家族が迎えてくれて、一緒に夕食を取り、子供たちをお風呂に入れて、一緒に遊んだり絵本を読んだりして、寝かしつけをする。子供たちの寝顔を見ると1日の疲れも吹き飛ぶ。

子供たちの就寝後は、紅茶を淹れ、お互いを労いながら夫婦2人の時間を過ごしてから眠りにつく。

 

そんな何気ない毎日が、私の宝物だった。

 

そんな日常が突然終わりを迎える。

202111月、私が仕事に行っている間に、妻が子供たちを連れて家を出て行った。原因は私が繰り返し行ったD Vのためだった。

D Vをしてしまうたび、妻に謝り、その後はしばらく平和な日常が取り戻される。それでも、口論になった際、また繰り返してしまう。

私は、自分の潜在意識に問題があることに気づけていなかった。D Vを行うたびに、それを妻のせいにして、自分の考えがいかに幼稚で自分勝手であるかということに気づけていなかった、考えようとすらしていなかった。謝罪はするけれども、心の中では相手のせいだと、そう思っていた。

 

家族のいない毎日は地獄だった。生きる目的が分からなかった。

愛する家族と一緒にいられないことが辛く、何をしても楽しくない、何を食べても美味しいと思えなかった。これまで自分の時間はほぼ全てを家族といることに使ってきたので、自分1人の過ごし方なんてわからない。毎日、泣いた。帰宅時、家に近づくと明かりがついている気がして、また家族が戻ってきた気がして、もしかしてと思い玄関を開けるけれど、中は伽藍堂だった。家のすぐ近くに公園があり、子供たちとよく遊んでいた。その近くを通るたびに子供たちの声が聞こえる気がして、公園の中を探すけれど見つからない。どこにもいない。そんな絶望を日々繰り返し感じていた。唯一、夢の中だけでは家族に会える。もう、二度と目が覚めなくて良いから、ずっと夢の中で生きていたいと本気で思っていた。

 

たんとに通い始め、D Vについて学ぶ中で、これまでの自分の行動も、自分の感じ方も全て、独りよがりでしかないことに気付かされた。

本当に辛かったのは、信じていた夫にD Vを受けていた妻であり、そのせいで生活の拠点を移さなければ無くなった子供たちのはずだ。妻は1人で子供たちの面倒を見なければいけない生活を送っていて、自分の時間もなく、ストレスも相当だと思う。子供たちもまだ幼いのに、父親からの愛情を受けられないこと、今後父親が近くにいないことを負い目に感じてしまうかもしれない。教育面でも、これまで夫婦で話し合い、子供たちのためにしてきたことが、環境が変わり、全てが崩れ落ちてしまうように感じる。私が傷付けたのは愛する、守るべき家族であり、私に辛いと感じる資格などなかった。本当に家族が大切ならば、もっと早くに自分がしてしまったことの重大さに気づき、行動を変えるべきであった。

 

これまで、D Vについて真剣に向き合うことをしてこなかった。

その原因となる自分自身の身勝手な考え方にも目を背けていた。

でも、この学びの場で、知ること、学ぶことができた。

ただ、学ぶことと、それが身につくことは別物である。

でも、これまでとは違う物の捉え方が出来始めている。

 

私は学びを行う際には、まずゴールを設定する。

たんとで学び、どうなりたいかを考えたとき、自分を変えて、いつか、何年かかっても、妻と魅力的な関係性を持てるようになりたいと考えた。

他人は変えられない、変えられるのは自分だけであると学んでいる中で、相手がいることを前提とした関係性を目標にするのは適切ではないかもしれない。

それでも、自分が変わることで、それを妻に見てもらい、今後夫婦の形がどんな風に変化してしまっても、出会った頃よりも、家族で過ごしていた時よりも、お互いを思いやり、お互いが相手を尊重できる、そんな魅力的な関係になりたいと思う。正確には、妻にそう思ってもらえるくらいの、魅力的な人間になりたい。そのために、優しく思いやりのある人間になる努力をしようと思う。

愛しているという言葉は毎日妻に伝えていた。その言葉に嘘はないが、独りよがりな愛だった。今度は相手を本当に思いやり、愛したい。それが相手に伝わらないかもしれない。報われないかもしれない。

 

それでも、本当に大切な妻や子供たちを愛し、変わる努力をすることしか私は出来ない。それならば全力でそれをしようと思う。それが償いであり、それが愛だと思うから。 

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