カメラ

『カメラ』

子どもが生まれるときに、ちょっとお高いミラーレスのカメラを買いました。

分不相応かな?ミラーレスなんて使いこなせるかな?

でも子どもの成長を写真という記録に残したいな。

量販店に三日間通い、悩んだ末での購入です。

 

その間、店員さんはずっと声を掛けずにいてくれました。

購入希望を伝えたときの第一声は「三日間、通って頂きありがとうございます」でした。

そこからは、機能の説明やこんな写真を撮りたいんだと会話が弾みました。

 

その後、二人の子どもを授かり、成長記録や日常の何気ない写真を数えきれないほど撮影しました。

これからもずっと子どもの成長をこのカメラで撮影していくことに疑念はありません。

 

しかし、ある日を境に、このカメラが子どもを撮影することはなくなりました。

 

とある日に、仕事から帰宅しすると

「離婚して。理由は手紙に書いてあるから」。

パートナーとの会話はこれが最後です。

 

まとめてあった最小限の荷物を持って、

パートナーと二人の子どもは寝間着のまま家を出ていきました。

寒い時期にも拘わらず、寝間着のまま出ていったことから、

いわゆる「昼逃げ」を手伝う方がいたのでしょうね。

 

昨日と何も変わらない部屋ですが、パートナーも子どもがいません。今後はパートナーと子どものいない人生です。生きる希望を失い、生きる意味すら見出せない。自暴自棄になって、ふらっと人生を終わらせてしまうかもしれない、そんな精神状態で何日家に引きこもっていたでしょう。

  

そんな私が、現在は毎日規則正しい生活を過ごしています。

仕事も順調にこなし、掃除、洗濯、炊事その他すべての家事もきちんとこなしています。

 

気のせいかもしれませんが、

周囲からの食事のお誘いや仕事以外の私的な相談も増えた気がします。

  

たんとすまいるは、自分の行った暴力に向き合い、壊してしまったもの・失ってしまったこと等に責任を取る為のプログラムです。 それは、決して明るく楽しいプログラムではありません。

しかし、後ろ向きなプログラムでもありません。

自分らしく笑顔になりたい、子どもの笑顔を取り戻したいという前向きなプログラムでもあります。

 

なぜ自分はパートナーに暴力的な言動を取ってしまったのか、自己の欲求はどこまで満たしてよいものなのか、その他多くのことを学んで、悩んで、議論して、時には成長したのにまた元に戻ってしまい反省して。そんなことを繰り返すことが当たり前の日常になってます。

 

そして毎週のプログラムに参加するには、日程調整は当然のこと、参加する自分の精神状態のコントロールや、与えられた課題を計画的にこなす必要があります。

そのため、自分の行った暴力に向き合うためのあらゆる行為が、規則正しい日々を送ることになり、自暴自棄になることを防止している側面もあります。

まだまだ私は自分の行った行為に責任を取ることは出来ていませんが、定期的に受講し規則正しい生活を続けていけば、いつか心から笑える日が来ると信じています。

 

 もう二度と使うことがなかったかもしれないミラーレスのカメラ。

これからは、このカメラで前向きの象徴とも言える「空」の写真を撮ろう。遺産は残せなくても、子どもが笑顔で見てくれるような綺麗な写真を残そう。人生に新たな目標を立てることが出来ました。

 

いつかまた子供の笑顔を撮影できる日が来るよう、止まることなく学びを続けていきます。

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