三年目への思い

 12月でグループに参加して二年が経ちました。私が二年前参加したときに、その当時数年学んでいる参加者は多くの学びから更生への道を進む、まるで修行を重ねた高僧のような存在でした。

さて、二年経過した自分は参加当時と比べて何が変化したのか? 私も高僧のような参加者の存在に近づけているのか? と振り返ってみたところ、パートナーと交わした取り決めを反故してしまったり、職場やその他の状況で他者に対してネガティブな意識を持ってしまったりすることがあり、とても高僧どころではなく、煩悩が振り払えない自分の学びの浅さを思い知らされました。

 そのこともあり、今回は二年目の振り返りと、三年目への抱負について投稿します。

 

●学んだつもりになっている

  この二年で学んだ知識、関連する書籍によって、自身が抱えていた「生き辛さ」に対する思考と行為を変えることで何とか生きて来れましたが、家族や他者に対する思考と行為について理解はしていても、ふと逆戻りしそうになります。

 おそらくそれは、知識や学びの年数を経る内に「自分は良く学べている」と傲慢になり「分かった」つもりになっていて、自分は正しく、相手が間違いであるという加害者特有の思考と相まって、選択を誤ったのではないかと考えます。

 確かに学びで得たことを職場で生かすことで、人間関係の風通しは若干改善を感じますし、子ども達との交流もさせてもらえており、加害行為に対する責任を負うことの思考を持つことができました。しかし知識は知識であって、全ての物事に当てはまることではなく、その知識をもとにさらに相手との関係や状況を考え、人間関係を意識しなければ、上手くいかなかったときに「言うとおりにやったのにダメだった」「やっぱり自分はダメなやつだ」「自分は変わろうとしているのに相手が変わろうとしない」「こんなの意味がない」といった被害者意識になるのではと思います。

 幸い私は上手くいかなかったときに、そのような思考になることはほとんどありませんでしたが、学びが定着できていないことに気付かされ、「加害者性を克服することは一生かかることだということを認めること」という教えの難しさを痛感しています。

 

●「自分を許すこと」について

 私たちの学びに「自分を許すこと」という考えがあります。端的に言うと、自分を愛し、許すことで、他者にも愛を与えることができる。という考えです。

 グループに参加した当初は、自分が加害者であることを認めてから学びが浅く、許されないことをした結果、別居することになった自分を許すことなど理解できませんでした。なので半年以上は自己犠牲や希死念慮が抜けず、自分を理解しようとすることはほとんど考えていませんでした。

 その結果相手を優先するばかりに心身共に自分の余裕がなくなり、相手を責める思考や自分を正当化する思考になりそうなことがありました。そのときから、どうやら自分自身の状態を改善することからしないと、学びの効果がない。と考え、自分を許す行為として「無理をしないで、相手と自分の欲求を交渉する」ことを意識しました。あまりにも単純かもしれませんが、当時の私はそのことすらも困難なほど自分を許すことができなかったのです。現在は自身の欲求を満たしながら相手の欲求充足を考えられるようになりつつあるので、以前ほど自分を犠牲にしてでも状況に対応するといったことが少なくなりました。

 二年目を終えて「自分を許すこと」について思うことは、加害行為をした自分を肯定するのではなく、そこから自分の過ちを認め、更生のために努力しようとする自分を許すことと捉えています。

 過去の家族や他者への加害行為をなかったことにはできませんし、加害行為自体は決して許されることではありません。しかし過去の加害行為と自分が更生しようとすることは別の問題なので、過去の自分と今しなければならないことを一緒にしてしまうと、自分を許すことが困難になり、他者を許し愛することもできなくなるのではないでしょうか。

 

●体験談出版について

 私たちのDVの様子と更生へと向けた体験談には、暴力に苦しむ被害者・加害者両方に向けたメッセージが込められていました。自らの暴力行為を振り返り、一人一人異なる文章で表現されているので生々しさがあり、プログラムに参加してからの変化などの気付きは、他のDV関連書籍では見られない貴重なものです。

 皆さんの体験談からは、加害行為をなくしたいという私たちの思いを感じられ、同じたんとの仲間としてこの本を手に取ることができたことを感謝しています。

 

●三年目について

 私たちの学びには終わりはなく、生きている限り常に学び続けなければなりません。そしてこの学びは、分かったつもりになってしまうと大きな落とし穴があります。そのことを注意するためにも、自分の選択は関係性を良くするものなのかを意識し続けることです。

 そしてDVは加害者にも焦点を当てて、加害行為をなくすために未然に防ぐことも必要と考えます。そのために加害更生プログラムの存在と意義を伝えることに少しでも貢献できればとの思いです。

 

                                                      1-16