「車窓より・・・」(From The Window of Kurobe Gorge Trolley Train)

初夏の猛暑日。

出張先での仕事が早く終わり、現地で勧められた<黒部峡谷トロッコ電車>に乗ってみた。

窓のないオープン客車で自然の息吹を浴びながら、心身が黒部の深い谷に沈み込んでいく。

黒部ダムの竣工は1963年。1956年から7年の歳月と当時の金額で513億円の巨費を投じて、延べ1,000万人の尽力と171名の殉職者があって完成したという。

私が誕生する前から巨大ダム建設のために働いていた工事用列車に揺られながら、人間の手で秘境を切り拓いた歴史と苦労を体感する。

今も現役で活躍する観光列車の雄姿を眺めていると、いつしか列車と意識が重なり過去へとタイムスリップする。

 

私自身は、日本の高度成長とともに育ち、世界屈指の発展を遂げ「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた時代に社会に出て、多くのことを体験した。一生懸命働いて成功も多かったが、数々の失敗もした。そのひとつに自身のDV行為がある。

サラリーマン人生も終幕に近づいている。

周囲を見ると、年齢を重ねたご夫婦や若いカップルなど、どの観光客も幸せな笑顔に満ちている。しかし、私は家族からこうした笑顔を奪ってしまったのだとあらためて強い後悔を感じる。

 

でも、まだ自分は生きている。

軋み、大きなうなり声をあげて走るトロッコ電車からは、力強い声援を贈られているようだ。

「人生を嘆いて終わってしまうのはもったいない。まだ、できることはある。」

多くの鉄道が廃線となっているなかで、人々に夢と希望を与え続けるトロッコ電車。

ひとつの役割を終えたこの列車が、今なお多くの人々を幸せにしている事実。

仕事を言い訳にして、家族をおざなりにしていた過去は変えられないが、今からでも家族の幸せのためにできることはみつけられるはずだ。

自らの上質世界(楽しみの欲求)が美しい景色のなかで満たされる2時間の小旅行。

ここでも家族と幸せを共有したいと心から願う瞬間に出会うことができた。素直に感謝。

(どこにいても人生に対して前向きな気持ちになれるのは、『たんとすまいる』で仲間と学びあえる環境があるから・・・。深く感謝したい。)

 

<写真は、黒部峡谷 新柳河原発電所(柳橋駅前)>

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